オーストラリアは異民族国家であることは、誰もが知っていることです。
大人の4人に1人が、外国生まれで、バックグラウンドも違うため、考え方、生活習慣、
行動がかなり違います。
普通は、この違いを楽しんで、お互いに学びあうこともできますが、今回のコロナ対策を
万人に浸透させようとすると、かなり、無理が出てきます。
幼稚園の現場で働いて、”常識はどこへ行った?”と思わされることがありましたので
買いておこうと思います。
幼稚園、保育園も初めて閉鎖になる
今回、6度目のロックダウンを迎えているビクトリア州。
もういつからまたロックダウンが始まったのか、思い出せないくらい、最近は常に何らかの
規制がかかっている感じがします。
でも、一昨日8月21日の州知事の発表で、初めて今でのロックダウンとは違う政策が
取られることとなりました。
その政策とは、子供の感染率は低いし、今まで大丈夫であろうとされてきた保育にも
ストップがかかり、
幼稚園、保育園も閉鎖される
ことです。
これまでは、コロナ感染で子供への陽性反応が少なく、幼稚園が閉鎖されることは
ありませんでした。 ですから、今回の、デルタ変異種の感染力は恐るべき高さで、
今回の陽性者の中にも8歳以下の子供もかなりの人数が含まれていたことに、
専門家チームも警告をしているわけです。
近隣の、保育園、いくつかの幼稚園もクラスターを出したホットスポットに挙げられていました。
これでビクトリア州は、いよいよ明日から正式に、幼稚園から高校生の12年生まで、
全ての生徒がリモートラーニングに移り変わります。
登園条件を満たす子供たちのみ登園可能という限定つき
”コミュニティー内の人の動きを抑えて、感染拡大を抑える”という
州政府の方針ですが、登園条件を満たす子供たちのみ、登園していいことになっています。
その、条件とは、
”子供のどちらか片親がAuthorised Workers ”で、もう一人の親が、諸事情から、家で
子供の面倒を見ることができない場合に限り、子供を幼稚園か保育園に行かせていいということです。このAuthorised Workerですが、医療関係者、警察関係者、教師、第一次産業従事者
(食糧流通関係含む)など、いろいろな条件があり、きちんとリスト化されています。
雇用主から発行してもらい、園に提出できる。
*社会的地位、情緒、発達などの理由などで、継続する保育が必要とされる子供たち。
この職業についている家庭、そして、もう一つのVulnarable childrenの子供をざっと数えてみて、20名中8人ほどが、
登園してくるであろうと、私の予想では見積りを立てていました。
ところが、今日どうしても明日からのクラスに子供連れてきたい親たちが、
どんどん連絡をしてきててんてこ舞いでした。
その数は、予想人数をはるかに超えています。
そして、政府が提示しているPermitted workerに含まれない家族からの嘆願も入っています。
条件付きのお預かりでもその実態は
もちろん、正当な理由で登園できる子供もいますが、それ以外の子供も含まれています。
このWork Permit の証明書は、偽りの証言をすると罰金を取ることがあると、書面上では
書いてありますが、実は、自営業をしている人は誰もが簡単に発行できるものなので、
切羽詰まっている親は、その書類をメールでばんばん、送ってきていました。
去年、メルボルンで初めての自粛があったときに、
”自宅で子供の面倒を見られる親は、登園を控えてほしい”という要請がありましたが、
その時も、同様に、切羽詰まった親が、親戚の自営業者に頼んで書類を発行してもらったり、
専業主婦だったはずなのに、なぜか、急に夫の自営業を手伝っていることになり、
子供を見られないことになったりと、都合のいい理由を探して、
無理に、子供を幼稚園に預けようと必死の親が沢山いました。
職種で、書類が出せない親は、親類の祖父母を病気にして、介護のため、子供に手が回らないどうにかVulnarableの中に、
入れてもらえないかと訴えてくる人も。
最終的には、去年勤めていた園では、半数以上の子供が様々な理由で、カテゴリーにはいり、
園は、まるで通常保育さながらの園児を抱えての操業でした。
もちろん、そういう自分勝手な親ばかりではありません。
人によっては、

子供を園に行かせることはできるけど、先生たちへ、そうすることで感染の
可能性を高めてしまうので、自分が家で子供は見ます。
不要不急の外出は控えます。
というお心遣いを下さるありがたい方もいますから、本当に、人の見解、判断、行動はさまざまなのです。
閉鎖されているはずの公園にも人が集まっている
私は、幼稚園教師と、副業の療育サポートもどちらも、Authorised workerの枠に入りますので、
勤務地と時間を書いた雇用主からの証明を持参して、ロックダウン中も通常勤務となります。
先日、療育サポートでクライアントさんの家の近所に行ったら、閉鎖されている公園に
人がいっぱい集まって、春の陽気を楽しんでいましたし、通りに小学生も集団で集まって
遊んでいました。
クライアントさん曰く、バックグラウンドによって、ロックダウンの認識度、とらえ方が
違い、違反している人が多いとのことでした。
州知事は、「自分だけは大丈夫。コロナの陽性になるはずがない。」と思っている人がいるけど、
それは大きな間違いだから、デルタ変異種をあなどらないようにと、会見で訴えていましたが、
どう考えても、私が見た光景では、そう考えている人たちは、いないようにみえました。
豪州では皆が一斉に同じ行動をとるということはない
こういう現実を目の当たりにすると、本当に、単一民族が大部分を占める日本とは
違う国にいると、実感させられます。
⋆自分一人ぐらいは、ちょっとぐらいは、これくらいはルールを破っても大丈夫だろう
⋆どうにかなるさ、という根拠のない楽天主義
どの国に住んでいても、こういう考えの人はいると思いますが、オーストラリアは
特に多いのが実態なのです。
今回は、たまたまコロナ対策でそれが表面化していますが、
ブッシュファイアーの時でも、水不足の時でも、自分さえよければと、
右に倣えの考え方で、皆が一斉に同じ行動をとることがない、自分の常識は、
別の人にとっては、非常識ということが日常茶飯事の異民族国家。
悪くいってしまえば、国民がそろって一つのゴールに一致することがない、
まとまりのない国、やはり移民国家といえます。
その一方で、多様性に富み、一つの解決策、手段に固守しない。
マイノリティーな考え方や、違いを受け入れることにも寛大な国家と言えるかもしれません。
虚偽の申請が見えても、人は人。心みだされずわが道をいこう
先週までは、全く違う職種にいたのに、今日の書類提出の時点で、なぜかAuthorised workerとして申請してきた親や、
自分の都合で子供を明日から登園させようと連絡してくる親。
その様子を見て、若い職員たちは、目を丸くして対応していました。

「一応、その実態を上司に報告しておいた方がいいけど、
私たちの立場上では、その提出書類が虚偽だとか、急に職種がなぜ変わったのかとかは言う立場でないよ。」
と、助手に伝えました。
結果、上司も私と同じ見解だったそうです。
アラフィフの私としては、社会には、色々な人がいて、自分の常識からは考えられないような人もたくさん見てきました。
そういう人たち、自分と違う人たちもいるのが社会であると、やりきれない気持ちは流して、
自分の仕事、役割に徹するのが、情緒的に疲れない秘訣なのではと、最近思います。
自分がコントロールできることは、するけれども、それ以外のこと、どうしようもないことは
仕方ないと、割り切る。 こうすることで、自分の気持ちの浮き沈み、そこから感じる疲労感を
減らせると思います。
明日、登園してくる子供たち。
例え親が無理やりに用意した、書類で登園してきたとしても、子供たちには何の罪もないわけで、私は、くれぐれもそういう背景は抜きで、できる限りの仕事をしようと、
思って、明日は登園するつもりです。