息をするように自然にできること~強みを活かす

ladybug on yellow flower
本記事の内容

自粛緩和で、解放感を味わう

世界で一番長かったといわれる111日間の自粛が少し緩和されたメルボルン。
天気の良さも重なり、街を歩く人々の数も増え、マスクで隠された表情も、心なしか明るく見えました。

「自粛後、初めて、子供たちと動物園に行きます」と嬉しそうに報告してくれる園児のご父兄。
「K-mart(生活全般の雑貨を買える店)に行って、誕生日に欲しがっていた人形を本人に選ばせます」と、子供を園に送った後、そそくさとお店へ、”入店の時間を予約しに行く”ご父兄。

まだ、地方都市への出入りは解禁にはなっていないものの、今までの不自由さに比べたら、なんという
幸せ感でしょう。 しまっていたカフェの店先で、お日様にあたりながらコーヒーを味わう人も見られて、気持ちが上がりました。

Banh Mi roll

ベトナム人街で有名なFootscrayでかってきたバインミー。 その場で作ってくれるお姉さんに、チリの量、入れてほしい野菜の量なども全てお好みにお願いできます。

かくいう私も、今まで規制で7キロ圏までしか買い物に行くことができなかったのに、今週からその距離の規制がなくなったので、
ちょっと足をのばしてベトナム人街まで、お買い物に行くことに急遽決定。

帰りに、ベトナム風サンドイッチ、バインミーBBQポーク入りサンドイッチを買ってきました。

バクっとかぶりつくと、
久しぶりに本場の味が口いっぱいに広がって、新鮮でおいしかったです。気分的なものが大きいと思いますが。(笑)

職場で子供たちから元気をもらった

気持ちが上がったといえば… 今週嬉しかったことの一つ。
担任するクラスの中で問題になっていた子供の話をしましょう。

2週間の春休みが終わって、園児がほぼ全員Term4に帰ってきてから4週間がたちました。
お家で、家族の中でわりと自由に、決まりに従わず自由奔放に過ごしてきたL君が園に戻ってきて、
ここしばらく見られていなかった問題行動が、多発しました。

問題行動の原因としては、

⋆今まで、家庭の中では型にはめられず ’仕様がないわね’で終わっていたことが園の中のルールではそうはいかず、行動が上手く調整できない。

⋆お友達と遊びたいのに上手く言い出せず、遊ぶ術も知らず、ついついネガティブな行動で
相手の関心をとってしまう。例えば、砂をかける、ガバッといきなり後ろから捕まえてびっくりさせようとする。相手の気を引こうとして、被っている帽子を取り上げて遠くへ投げつける。

⋆先生や、お友達が自分の方へ向いてくれたら、1人追いかけっこを初めて遊びにもっていこうとする。(遊びたいけど遊ぼうと言えないから)

⋆お部屋の中に28人のお友達がいる、ひと気、雑音、動きなどに異常に反応してしまい、ついつい椅子や机などの家具に乗ってしまう。私が下ろそうとすると、手を噛んで外へ逃げる。

そんな、L君の園での問題行動を、お母さんに伝えないわけにはいかないし、他のお母さん方から苦情として、L君のお母さんに伝わるのは、順序違いなので、私は担任として、現状をお伝えしてきました。
ご父兄に、いいことばかりをお伝え出来ないので、難しい話ではありますが、事実として伝えるのも私の役割です。
自閉症とADHDの症状をL君のお母さんとしては、家で言い聞かせているのに。
L君の、発達レベルに合わせた作業療法は、コロナの影響でオンラインのZoomをつかった遠隔セラピーのみで、自閉症とADHDを共存させて持っているL君には、合わなかった。
つまり、問題行動は、家でも園でも出ているのに、
L君の行動をポジティブに転換する対策は、何も取られていないということです。
そっか、やっぱりな~。
発達障害を持つ子を何人も扱ってきている私としては、L君がどうして、そういう問題行動に出てしまうのか、どんな決まりやルールをL君に理解できるように、教えてそれを日々、繰り返し教えていくのか。試してみたら行動が好転するのではと思う、方法はいくつか試せますが、とにかく、学期末の仕事量が多くて、そこまで手が回らない。Term4で、小学校へ提出する個人レポートもあるし、27人の他の子供も、
それぞれ問題を抱えていて、ご父兄との細かいやり取りで、保育後の時間は潰れてしまっている状態でやってもやっても仕事は終わらない。

”ヘルプが必要なのは、今”

でも、L君のお母さんと話していて、どうしていいのか、セラピストも、小児科医も、誰も助けてくれない、いいかせている、睡眠をできるだけとるように生活習慣をつけている、園に来る前に、変に興奮しないように過ごさせているなど、できる限りのことをしているというお母さんの必死の訴え。

マスク顔の上にウルウルとした目を見て、やっぱり、私が ”今” やらないといけないかなという気持ちに。

L君の毎日の生活ゴール表を作って、好ましい行動をできるだけするようにフォーカスを持っていく。
悪い行動で、人の気を引こうとするのでなくて、いい行動ができたら、お友達もうんと、一緒に遊びたくなるよ。と子供が理解できるような、表を作って、一つ一つ体験から身体で覚えさせていく。

ポジティブな行動、L君にしてほしい好ましい行動を書き出して、絵と一緒に表にして、1週間それが園で達成できたら、「おめでとう、よく頑張ったね。お友達ともたくさん遊べたね」と、思い切り認めて、 褒めるというご褒美を与えてあげる。
そして、そのご褒美に、園の小さなミニカーの中から一個週末に借りて、お家で遊んでいい。月曜日の登園する際に、その借りたミニカーは、園からの借りものなので、公共の物は、他の人のために、きちんと返すということを理解して、それを行動する。
一度、欲しいものを手に取ると、なかなか、それを元に戻すことができない彼にとって、この借りたものを返すという練習も、一つの訓練です。 この方法でやっていきましょう。と、表を二つ作り、一つは園で、もう一つはお家で同じ、お約束と行動のゴールを、混乱することなく同じように使えるように、お母さんに渡しました。
プラス、”Picture Exchange Communication System” 通称PECSと呼ばれる、自閉症児などの子供が
シンプルに表示された絵から、身の回りのこと、ルールや、生活のルーティーンなどを理解しやすいように開発されているツールを使った、絵本を持たせて、お母さんに、繰り返し、お家で読んで、怒りそうになった時、気持ちがイライラした時、癇癪を起したり、人にあたるのでなくて、深呼吸をしたり、静かな場所へ移動して、何か他の物を見つけたりする方法を、学習させてもらうようにお願いしました。

このツールを作ったり、プリントしたりなど、別に私でなくてもいいので、助手の一人に、サンプルを見せて、作れるかどうか聞いたところ、

 

”私は、そういうのPCを使って教材を作るのは得意でないので、
何日もかかりそう。できない。”と言われました。

 

がくっと来ましたが、変にできると言われて、後で無理と言われるよりも、かえって正直でよろしいと思い、結局他の仕事を後回しにして、私が作成しました。

たった一週間でも見えた確実な変化

結果…
たったの、一週間ですが、L君、かなり、自分の行動表を気にして、私からGoodのサインがもらえなかった項目などについて、結構、がっかりしたり、泣いたりしていたそうです。お母さんは、そのたびに、私が私がソーシャルストーリー本を取り出して、お友達も、L君の行動によって、悲しい思いをした、もう一緒に遊びたいと思わないかもしれないなどなど、話し合う機会が取れたと、報告してくださいました。
そして、週の最後の金曜日の保育で。
お外で、お友達にバリカン星人ごとく、両手のハサミチョップをくらわせようと、背後から近寄ったL君に、私が、「お友達と遊びたいんだね。何て、言ってお友達に一緒に仲間に入れてもらえるか聞けるかな? 本になんて書いてあったか覚えてる」と聞くと、両手のハサミをしまって、
「うん、遊びたい。仲間に入りたい。」と言ったのです。
こんなに、素直に、L君が自分の気持ちを言えたのは、初めて。
miku
miku
”Can I be your friend?  Can I play with you?” って聞くんだよ。
というと、そのままのセリフを相手に言うL君。
”Sure, you can play with us!” と、お友達から言われた時の、L君の表情は忘れられません。
お友達のFootballの仲間に入れて、ボールを一緒に追って、肩を組みあって、ゴールを喜び合う。その子供たちの遊びを見て、私の疲労感、残業時間も、吹っ飛んでとても嬉しい気持ちになりました。
まだ、一週間目なのに、この効果。まだまだ、アップダウンがあることは承知のうえですが、この発達障害児に合わせた指導法、本当に、真剣に、園とお家でタックルを組んで取り入れられたら、効果は抜群です。
お帰りの時に、お母さんにお友達と一緒に遊んだことを嬉しく報告したL君。😁(というか、報告まではできずに、私が報告したことを、部分的に繰り返してお母さんに伝えたL君です)。

お母さんは、

”オンラインのセラピーも上手くいかず、こんな本を読んで、一体、いつになったら普通の行動ができるようになるのか、そんな日はやってくるのかと気が遠くなりそうだった。”と正直に話してくださいました。

miku
miku
私は、
”小児科医も、セラピストも、どんな優秀なスペシャリストも、L君のライフに入ってきては、いずれ抜けていき、誰も一生 L君に付き合ってはいけません。 
L君が、大人になるまで生きていく上で、ずっと必要な術を付けられるのは、お母さん、そして、L君にずっと寄り添っていくのは、セラピストでも誰でもなく、お母さんと家族ですよ!”と励まして、お母さんを涙ほろりとさせて…
今週も、お仕事終えました。

息をするように自然にできること

どの子も持っている可能性を最大限に引き伸ばして
人格の土台を築き上げてほしい!

そいう言うこと、私、本当に思っているし、信じているから、
ぽろっとご父兄に言えるし、
口先からのリップサービスでないことが相手に伝わるようです。
こういう指導を、考えて、ツールを作って、一番効果的な方法を園と家庭で共同で開発して、
子供とお母さんをまとめてサポートする。
一つ一つの作業は、手間暇かかるし、準備にも時間をとられるけど、
苦痛に感じることなく、準備できるし、指導のアイディアが沸々を湧いてくる。
これが、私の強みなのかな。と、子供たちのお蔭で確信することができました。
息をするように、苦も無く、自然に行える。それが、強み。
それを仕事にしてくことが、私の今後の課題です。

 

 

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